2022年のベスト50
夏に自律神経失調症を患い、さらに抑うつ症状がひどく出たため心療内科にかかったところ適応障害との診断を受けた。フリーになってからめちゃくちゃな働き方をしていたのでいつかは体を壊すだろうと思っていたが、メンタル面のダメージは自分で思っていたよりも大きかった。ちょっとした緊張や不安で動悸が止まらず、やがて呼吸の仕方がわからなくなって過呼吸を起こし、1週間で3回も深夜救急で治療を受けた。
9月に入り、身体症状が少し和らいでくると今度はうつの症状がひどくなった。仕事のスタッフからメールが届くたびに叱責されているような気持ちになり、編集部のSlackで通知が飛んでくると冷や汗が止まらなくなった。ノートパソコンに向かうと体が硬直し、ほとんど気絶したまま3時間くらい経っていることもあった。死にたいとはギリギリ思わなかったが、毎日眠ってまた次の日の朝が来るのが本当に恐ろしかった。
初めての抗うつ剤治療は本当に体が持たず、2週間ほど飲み続けても一向に症状がよくならなかった。副作用が特にひどく、吐き気と頭痛で最初のうちはほとんどベッドの上から動けなかった。しかしうつ症状は毎日16時になると少し軽くなり(うつ患者によくある日内変動というものらしい)、夕方から深夜にかけては抗不安薬を飲みながら通常時の半分程度のスピードでなんとか業務をこなすことができた。毎日、明け方に乃木坂46の動画を観ながら睡眠薬の力を借りて眠りについた。
抗うつ剤を飲みはじめてから20日ほど経ち、ようやく効果が現れてからは目に見えて心も体も回復していった。それまでは仕事での必要最低限の会話以外はとてもできる状態ではなかったが、プライベートでも少しずつ人と会えるようになった。抗不安薬が常時手放せない状態から少しずつ薬の量を減らし、今では本当に緊張する現場のときだけ飲むようにしている。抗うつ剤は今でも欠かさず飲み続けているが、来年からは徐々に減らしていく予定だ。LINEや電話で相談に乗ってくれた友人たち、仕事のフォローをしてくださった関係者の方々、適切なアドバイスをくださった医師やカウンセラーの方々には本当に感謝しています。
まだ寛解とまではいかないが、医師からは驚異的なスピードで回復していると聞いた。なので2022年の総括は「生きているだけで100点」です。
いきなり暗い話になりましたが、体調を壊しながらもなかなか充実した仕事ができた1年だったのではないかと思う。こんなひどいコンディションで仕事を続けていたのは今思えば狂っているが、それでも自分が熱を持って作っている特集を手放すよりはマシだと思っていた。でも次からは絶対に、体を壊す前に休みます。
そんなわけで今年の下半期は『クイック・ジャパン』で長濱ねる特集、Aマッソ特集と2本の表紙特集を作り、それぞれ(課題は残ったものの)多くの反響に手応えを感じることができました。ぜひ買ってね!
そして体調が回復した10月ごろに太田出版で社員の話が持ち上がり、面接を受け、来年から就職することになりました。自分の体調を慮って特集制作のサポートや社員契約のために奔走していただいたQJの小林編集長には本当に感謝しかありません。
フリーライター/編集者としてのお仕事は2022年をもって一旦終わりとなりますが、3年半の間、本当にさまざまな媒体でお世話になりました。今後は『クイック・ジャパン』と太田出版の業務に専念いたします。
というわけで以下2022年の個人的ベスト50をお届け。整理する時間がなかったのでなんでもアリだよ!
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50.綿矢りさ『嫌いなら呼ぶなよ』
49.藤岡拓太郎『ぞうのマメパオ』
48.渡辺歩『サマータイムレンダ』
47.本城直季 『(un)real utopia』(東京都写真美術館)
46.西澤千央『女芸人の壁』
45.NewJeans『 ‘Ditto’Official MV』
44.凪良ゆう『汝、星のごとく』
43.つやちゃん『私はラップをやることに決めた』
42.滝口悠生 植本一子『往復書簡 ひとりになること 花をおくるよ』
41.佐川恭一『シン・サークルクラッシャー麻紀』
40.山本文緒『無人島のふたりー120日以上生きなくちゃ日記』
39.小林啓一『恋は光』
38.宇佐見りん『くるまの娘』
37.劇場版まーごめドキュメンタリー『まーごめ180キロ』
36.上坂あゆ美『老人ホームで死ぬほどモテたい』
35.ロロ『ロマンティックコメディ』
34.カッシオ・ペレイラ・ドス・サントス『私はヴァレンティナ』
33.真造圭伍『ひらやすみ』
32.伏見瞬『スピッツ論 分裂するポップ・ミュージック』
31.乗代雄介『パパイヤ・ママイヤ』
29.波木銅『万事快調〈オール・グリーンズ〉
28.松村圭一郎『くらしのアナキズム』
27.遠野遥『教育』
26.高山明『テアトロン:社会と演劇をつなぐもの』
24.ロロ『ここは居心地がいいけど、もう行く』
23.たらちねジョン『海が走るエンドロール』
22.佐々木チワワ『ぴえんという病 SNS世代の消費と承認』
21.川内倫子『球体の上 無限の連なり』(東京オペラシティ アートギャラリー)
20.玉田企画とゆうめいの「おたのしみセット」
19.劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM
18.藤本タツキ『ルックバック』
17.『見るは触れる 日本の新進作家 vol.19』(東京都写真美術館)
16.『進撃のノア shingeki noa』
15.TaiTan(Dos Monos)/玉置周啓(MONO NO AWARE)『奇奇怪怪明解事典』
14.乃木坂工事中「乃木坂46 バレンタイン大作戦」
13.押見修造『おかえりアリス』
12.東葛スポーツ『保健所番号13221』
11.濱口竜介『偶然と想像』
10.岡本真帆『水上バス浅草行き』
9.ダウ90000『ずっと正月』
8.高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』
7.乃木坂46『10th YEAR BIRTHDAY LIVE』(日産スタジアム)
6.高島鈴『布団の中から蜂起せよ: アナーカ・フェミニズムのための断章』
5.布施琳太郎キュレーション展『惑星ザムザ』
4.冬野梅子『まじめな会社員』
3.マイク・ミルズ『カモン カモン』
2.窪美澄『夜に星を放つ』
1.レオス・カラックス『アネット』