2020年のあらゆるベスト50
音楽、映画、お笑い、演劇、文芸などあらゆるカルチャーのベスト50です。
50- 浪漫革命『ふれたくて』
あらためて観ると少し懐かしい。6月当時はこういうディストピア的な未来を想像していたが、現実は果たして。いろんな意味で今年っぽいアイロニーだと思う。
49- 井上梨名『恋して❤りなウェーブ』
2010年代初期の電波系ソングを彷彿とさせるキッチュな世界観。櫻坂46次期エース候補のスーパーアイドルいのりこと井上梨名のディープな魅力が詰まった個人PVです。何回も観ていると情緒がバグってしまう。「君がすピーーーー」ってなんだよ。
48- 蛙亭『息子』
12月、ついにYouTubeチャンネルを開設。「お父さんの遺作のAVを親子で観る」という毒の効いた蛙亭らしいコントです。エロのさじ加減が絶妙。
47- 五反田団『業界人間クロダ』
5月に配信で観劇。演劇界と芸能界の微妙な力関係を描いたコメディで、ドラマの現場での演劇人たちの肩身の狭さにいちいち笑ってしまう。「STAND BY ME ドラえもん」でおなじみの山崎貴監督(と思われる人物)の出し方が悪意に満ちていて秀逸。
46- 平庫ワカ『マイ・ブロークン・マリコ』(KADOKAWA)
友達が不幸に見舞われたときに「助けることができなかった」と思ってしまうのですが、もしわたしが不幸なことになってもわたしの友達にはそう感じてほしくないです。ありきたりですが友達の存在をとても大切に感じる1年でした。
伝統芸能をまったく知らない人向けのガイドブックとして楽しく読めました。余談ですが私は九龍ジョー氏に憧れて雑誌の世界に飛び込んだみたいなところがあるので、九龍氏がこれだけ面白いって言うなら面白いんだろうと思う。実際めちゃくちゃ面白いんだろうな。来年は観に行きます。
44- 大九明子『私をくいとめて』
映画『私をくいとめて』本予告 〈12月18日全国ロードショー〉
年の瀬にヒューマントラストシネマにて。主人公ののんと親友の橋本愛が再会するシーンは『あまちゃん』ファンにはたまらない。岡野陽一のチャーミングな演技も最高でした。ただ林遣都はあまり魅力的に見えなかったのは、同じ綿矢りさ原作の「勝手にふるえてろ」の渡辺大知と比べてしまったからか。
43- 三木三奈『アキちゃん』(文学界2020年5月号)
「文學界」5月号掲載、第163回芥川賞候補作。トランスジェンダーの友人への愛憎入り混じった主人公のモノローグが強烈。内側からふつふつと滾る怒りの描写に迫力があった。終盤、社会的な正しさと個人の憎悪の感情の合間で揺れ動く筆致が卓越している。
42- HIHATT『THREE THE HARDWARE 4』
THREE THE HARDWARE 4-0「いまいますか?」
サイコロで出た目の金額で買った中古機材のみで音楽を作る、tofubeats主宰のYouTubeシリーズ。ジャンク品漁りの楽しさが詰まっているのでDTMの知識ゼロで楽しめます。やっぱり音楽つくる人ってすごいなー。ひとりでつくれるもんな。
41- ポン・ジュノ『パラサイト』
第72回カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編
たまに池尻大橋〜中目黒のあたりを遠るたびに『パラサイト』を思い出します。私の仕事も実質的にパラサイトみたいなものですが、しぶとく生きていく勇気をもらいました。
40- てへりんこ『日本語ラップしかなかった浪人生たち』
今年のベストオブインターネットです。2010年代初頭のはてなダイアリーを思い出しました。あのころのTwitterには生きづらそうな人たちがいっぱいいた。どのエントリも退廃的なエロスが渦巻く名文です。
39- 藤井聡子『どこにでもあるどこかになる前に』(里山社)
父が現在も富山県に住んでいる関係でたまに富山を訪れている。「地元の人」でありながら、一度は東京に出た「よそ者」でもある筆者の視点の置き方が面白い。帰るべき故郷がない身ながら身に覚えのある感覚が蘇ってきた。
38- 根本宗子『もっとも大いなる愛へ』
伊藤万理華の演技がとにかく素晴らしい。「はじまりか、」も傑作でしたが、まりっかの声は本当に美しいと思う。翻弄された今年の演劇界のなかで次々と新作を発表し続けた根本宗子、自宅のPCで配信を観ながら作品に救われる場面が何度もあった。
37- 大前粟生『おもろい以外いらんねん』(河出書房新社)
もちろんお笑いは好きですが、日常生活レベルにまでいわゆる“お笑い”的な価値観が蔓延しすぎていると感じることがあり、「おもろい以外いらんねん」はタイトルがそのまま現状のお笑いへのカウンターになっていてリアルでした。「人を傷つけない笑い」の言葉尻をとらえて批判する言説も未だにありますが、単純に「古い価値観に基づいた前時代的な笑い」が賞味期限を迎えたのだと思う。それだけに「人を傷つけない笑い」へのカウンターを狙ったウエストランドのM-1のネタがただただ古く感じてしまったことは否めない。
36- 令和ロマン「【大公開】M-1グランプリ1回戦完全攻略本【小公開】」
M-1予選突破の具体的なアドバイスを紹介しつつ「M-1に出ようという発想、それがおもろいから」という一般参加者へのメッセージがよかった。高比良くるまさんにはぜひお笑いルポライターとしての活動も広げていってほしい。年末に公開された「松井ケムリの千本ノック」も感動。来年のM-1は令和ロマンの優勝に賭けています。
35- 『杉咲花のFlower TOKYO』(TOKYO FM)
ゴリゴリのお笑い深夜ラジオに少々疲れてしまった日曜の朝8時にちょうどいい温度感のトーク。「選曲ソムリエ」のコーナーもお花ちゃんのセンスが光っています。正月は『おちょやん』をまとめて観る。素敵な日曜朝の時間をいつもありがとうございます。
34- 台風クラブ『日暮し』
8ミリで捉えられた京都の風景に想いを馳せる。早くライブに行きたい。
高校演劇をテーマにした青春ストーリー。舞台制作の裏側を丁寧に取材して描いているので演劇ファンにうれしい小ネタもあり、なにより創作意欲と真摯に向き合う主人公の姿勢に泣かされてしまう。
32- 鯔を愛する男『うっかりどこかへ行ってしまいそう』
日本各地のブックオフをめぐりながらマニアックなガールズポップス史を掘り下げる、サブカル旅行記の金字塔です。先述の「THREE THE HARDWARE」もそうですが中古品ディグの魅力が詰まっています。
31- 『欅って、書けない?』(テレビ東京)
櫻坂46への改名にあたって大団円を迎え、最終回で番組定番の「スーパーボールキャッチ」で渡邉理佐が必死にスーパーボールを拾いに走る姿に感動しました。先生に怒られた後の学級会みたいな雰囲気の回も多々ありましたがメンバーの魅力がいちばん発揮できるのは街ロケだと思っているので新番組『ここ曲がったら、櫻坂?』に期待したい。
30- BTS『Dynamite』
BTS (방탄소년단) 'Dynamite' Official MV
「Dynamite」のえげつないクオリティのパフォーマンスを見てどハマりしてしまいました。リードヴォーカルを務めるジョングクのイケメンっぷりに日々癒されています。最近、私がとつぜん髪を緑色に染めた理由の8割はBTSの影響です。
29- Le Makeup『微熱』
「この夏は僕らを 騙したまま過ぎていくのかあの台風で飛んでったペンを自転車で探しに出かける」(「微熱」)
日記・記録をテーマにした本作、余計な装飾を省いたシンプルで鋭利なフレーズが胸に刺さるアルバムでした。夜中の散歩でよく聴いた。
28- HASAMI group『200年後のループ』
「意味がない言葉なんてないよいつか死ぬときが訪れても君のジョークは200年後もループしてる」
HASAMI groupの記念すべき20thアルバム。今年、QJで青木龍一郎氏のインタビューを実現できたのは私のライター人生において忘れられない出来事でした。
27- 水川かたまり『アサミ〜愛の夢〜』
手前味噌ですが、編集を担当した空気階段・水川かたまりさんの初小説。エロとリビドーが煮詰まって相当面白い作品になっています。『タイタンの妖女』に影響を受けたというSF的な構成も光っている。
小説はこちらに掲載。
26- 田島列島『水は海に向かって流れる』(週刊少年マガジンコミックス)
わかりあえない他人を言い負かす技術ばかりがSNSでシェアされる時代だからこそ、わかりあえるはずのない人たちが歩み寄って共同体を築いていく物語が胸に染みるなあと感じました。
25- 吉澤嘉代子『サービスエリア』
大学時代、友達と何度も夜中にドライブをした。ペーパードライバーのおれは助手席に座ってひたすら好きな音楽をかけさせてもらって、今思えば数少ない学生時代の美しい思い出。車がほしいな。サービスエリアで吸う煙草がいちばんおいしい。
24- 岡奈なな子「岡奈なな子の日常short movie」
胸元の蝶の刺青が最高にクール。コンビニ飯を食いながら観ていました。
23- オジロマコト『君は放課後インソムニア』(ビッグコミックス)
ほとんど家の外に出なかった5月、真夜中の散歩が生活の救いでした。夜更かしは反体制の意思表示でありわたしたち市井の人々にとってのいちばん身近なアナーキズムだと思うのです。積極的に夜更かししていきましょう。
22- 佐々木敦『小さな演劇の大きさについて』(ele-king books)
普段のように頻繁には劇場に足を運べなかった1年。「『小ささ』には、大きなものをも含む、さまざまなことを考えさせてくれる、たくさんのヒントが潜んでいる」という一節が印象に残る。
21- 『さらば青春の光がTaダ、Baカ、Saワギ』(TBSラジオ)
言うまでもなく「東ブクロの嫁決定戦」の常軌を逸したトークの数々が忘れられない。次々と現れる猛獣のようなセフレたちが牙を剥くなかで森田哲矢の手綱捌きがお見事。東ブクロもリスナーもみんなセックスが好きそうなところがいいです。
20- 町田洋『船場センタービルの漫画』(トーチWeb)
最後の「みんな幸福になってくれ」という一節が、苦しかった時期の救いになりました。
19- 石戸諭『ルポ 百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』(小学館)
右派論壇と呼ばれる人たちへのインタビュー、特に幻冬舎・見城徹氏、「Hanada」の花田紀凱氏の語りはすさまじいものがありました。断絶の裏側を丁寧に見せてもらった。私たちとそう遠くない場所に右派論壇の熱烈な支持者はいて、私たちと同じように日々を慎ましく過ごしている。
18- だいにぐるーぷ『アメリカ全土で1週間鬼ごっこしてみた。』
シアトルからロサンゼルスまでを鬼ごっこで縦断するロードムービー。映像のクオリティはもちろん、『ブレイキング・バッド』や『24-TWENTY FOUR』などアメリカ映画からの豊富なサンプリングが彼らの魅力です。
17- チェルフィッチュ『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』
毎日、家のすぐそばにあるセブンイレブンに通っているのですが、日勤のバイトの男がなぜか私にタメ口で、それがかなり不思議。5月〜6月は配信で過去の名作に触れることができたのがよかったです。
16- 冬野梅子『普通の人でいいのに!』(2020年モーニング月例賞)
10年近くサブカルをやっているのでたいていの自意識の問題には決着をつけたつもりになっていたのですが、まだ見て見ぬ振りをしていた傷がありました(この手の漫画やエッセイを読むたびに傷を負っていく)。でも、結果として海外に行けなくてもウラジオ行きの飛行機に飛び乗るくらいの行動力があれば大丈夫ではないでしょうか。
15- ぬ『ぽかぽかひらがなけやき』
ぽかぽかひらがなけやき9 pic.twitter.com/035IpqceZo
— ぬ (@numo46) 2020年8月10日
日向坂46をテーマにしたエキセントリックなショート漫画。キャラクターはデフォルメされまくっているが一人ひとりの魅力をしっかりと描いている。空飛ぶみーぱんがこさかなを助けにくる回、だーこののお見舞いにアルバムが届く回などは本当に彼女たちの関係性の美しさが描かれていてオタクとしては涙を禁じ得なかった。
14- 赤い公園『THE PARK』
赤い公園 New Album『THE PARK』全曲ダイジェスト トレーラー
4月、このアルバムを聴きながら何度も深夜の中野通りを歩いた。いろいろな意味で忘れられない一枚になってしまった。
事務所から家に帰るまでの間、ラジオを聴いている時間だけが私にとっての生活だった。もぐらが地元に帰って白鳥の親父と再会する回、オズワルド伊藤の寿司泥棒の弁明回、I’sの思い出を語る回、など名作を数えれば今年も枚挙に遑がないが、ひとつ挙げるとすればやはりM-1当日のかたまり離婚回だろう。『踊り場』にはふたりの現実の人生が滲んでいる。
12- 住田崇『架空OL日記』
本作に描かれた平凡な日常の尊さを痛切に感じた1年になってしまった。『私をくいとめて』と同じく、臼田あさ美は頼れる会社の先輩役が本当によく似合っている。平日の夜、ガラガラの映画館から出るときに後ろの席に座っていた女子ふたりが「今日、この映画を観てた人となら絶対楽しく飲める!」と話していて、私もそう思う、と言いたかったけど口には出さなかった。
11- 『日向坂で会いましょう』(テレビ東京)
どれだけしんどい一週間を過ごしても、日曜の夜になれば「ひなあい」の放送がある。それは私にとって週に一度の礼拝のようなものです。彼女たちがやがて卒業を迎えたときに、アイドルとして過ごした日々を美しい思い出として振り返ってほしい。どんな形で卒業を迎えたとしても、私は彼女たちの選択を心の底から祝福する。ベスト回は「「こさかなが言うもんだから日向坂46 4thシングルのMV解説を皆でしましょう!」です。
10- RYUTist『ファルセット』
RYUTist - きっと、はじまりの季節【Official Video】
“新潟市中央区古町から生まれたアイドルユニット”RYUTistのフルアルバム。今年初めて知ったのですが、柴田聡子が作曲を手がけた「ナイスポーズ」が最高です。KIRINJI弓木英梨乃の「きっと、はじまりの季節」も最高にイケてるポップスです。
9- 奥田泰『ザ・エレクトリカルパレーズ』(ニューヨークofficial YouTube)
ニューヨークのふたりが聞き手として卓越している。誰かにとっての青春もほかの誰かにとっては苦い思い出で、重層的に語られるNSC時代の青春エピソードは“芸人”という職業の悲哀をそのまま映し出しているように思えた。『爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞』で「舞台で2、3分しゃべっただけで打ち上げすんな」と上の世代の芸人をイジったEXIT兼近に対し、屋敷の「俺らからそんな毎日まで奪うなよ!」という叫びは“エレパレ”世代の芸人を代弁していたと思う。
「男女が一緒にいたら何が何でも恋愛になっちゃうの?」というマミちゃんのセリフが印象的。高校生たちが率直な思いや違和感をぶつけ合い、ときに摩擦を起こしながら関係性を進めていく姿勢に胸を打たれた。その真摯な姿勢がどれほど尊いことか。決してわかり合えなくても言葉を尽くした先に共生の道がある。
7- ロロ『いつ高vol.8 心置きなく屋上で』
9月、神奈川芸術劇場にて。ようやく生の演劇が観れることの感動を味わうことができた。旧校舎の屋上に魔法陣を描いて、夢見る高校生が空を舞う。広い舞台の上に懐かしい学校の風景が立ち現れていた。ロロの演劇を観るといつも誰かに会いたくなる。
6- 高橋栄樹『僕たちの嘘と真実Documentary of 欅坂46』
4/3(金)公開『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』予告編/公式
平手友梨奈の不在をめぐる守屋茜、小林由依らの語りはほとんど『桐島、部活やめるってよ』であると言えます。「大人の責任ってなんだと思いますか?」という問いは観客である私たちにも投げかけられている。
5- ヤバイTシャツ屋さん『You need the Tank-top』
ヤバイTシャツ屋さん - 「Give me the Tank-top」Music Video
初めてQJの表紙特集を担当したのがヤバTで、毎日深夜の帰り道に爆音で『You need the Tank-top』を聴いて元気をもらいました。およそ1か月の特集制作中だけでも100回くらいはリピートして聴いたと思う。日常の些細な出来事を拾い上げて大声で歌う彼らのアルバムは、こんな時代だからこそ多くの人に響くはずだ。巻頭の取材をお願いした兵庫慎司さんのヤバTについてのエッセイ(https://qjweb.jp/column/43028/)がそのまま彼らの本質を捉えていると思うので、ぜひこちらを読んでほしいです。
↑こちらもぜひ。
4- 『愛の不時着』(Netflix)
観ていて恥ずかしくなるほどの純愛ストーリーですが、夜中にタブレットを抱えて何度も枕を濡らしました。ユンセリがトラックで拉致されて、車中で泣きながらジョンヒョクに電話をかけるシーンで号泣。後半の韓国編では後輩兵士たちの魅力も存分に描かれていて、韓国の自宅に帰ってからのセリはますます美しく、いやあおそろしいコンテンツですねと身震いしました。1話1時間半、全16話を怒涛の勢いで駆け抜け、その後1週間は「不時着ロス」に。
3- MOROHA『主題歌』
コロナに翻弄されたこのご時世にやりきれない想いをいちばんストレートに、力強く歌ってくれたのはMOROHAだったように思う。白か黒かの大雑把な議論からこぼれ落ちる、曖昧で繊細な感情を彼らはまっすぐに歌っている。5年後か10年後か、いつになるかわからないけれど、「こんな時代だったね」と振り返られるような音楽であるはずだ。
2- 佐藤順一、鎌谷悠『魔女見習いをさがして』
おジャ魔女どれみ20周年記念作品 映画『魔女見習いをさがして』予告編
日曜の少年野球の練習が嫌すぎて家を出る直前までリビングで『おジャ魔女どれみ』を観ていたときの気持ちを鮮明に思い出しました。魔法が使えなくても(願いが叶わなくても)人生は続くし、大人になってからの友達は一緒に酒を飲んで寄り添ってくれる。もはや『ハッピーアワー』(濱口竜介監督)だと言っていいでしょう。
固有の人生を生きる人々の時間が重なり合ってこの世界はできている。こぼれ落ちてしまうような些細な出来事や通りすぎていく風景に目を向けて、今の時代を生きる人々のすべてを描き取ろうとする筆致に感動した。ミニマムな関係性のなかで些細な出来事や風景をずっと描いてきた江國香織だからこそ、現実の耐え難い苦しみや束の間の喜びに肉薄できるのだ。目の前の風景と真摯に向き合う限り私たちは政治的でいることができる。
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仕事の面では会社をやめてフリーランスになって1年が経ち、ありがたいことにほとんど休むことなく年末まで駆け抜けることができた。コロナの以前はさまざまな書籍やムック本に携わっていたが、下半期はほとんどQJの特集を制作していた。この時代に雑誌で伝える意義についてはひとりで考えを深めることができた反面、やはり人に会って新しい知識を吸収することだったり、ライブハウスや劇場や映画館に足を運んで生の表現を体験することの大切さも痛感した。
今年も1年ありがとうございました。
来年はこのブログも最低月1の更新ができるようにがんばります。よいお年を。